リーン式開発の道具「ソリューション・インタビュー」のポイントを紹介します。
- 【ポイント1】顧客の課題を分割する
- 【ポイント2】提案物を分割する
- 【ポイント3】既存の事業にどう組み込むか、細かく具体的に示す
目次
リーン式開発の考え方
リーン式(リーン・スタートアップ式)開発では、
「顧客が本当に求めている製品」
を見極めることを重要視しています。
そして、実際の製品を作る前に
A「デモ」(ソリューション)
を顧客に見せて、顧客の
B 反応
を確かめることを推奨しています。これを「ソリューション・インタビュー」と呼びます。
そして、確かめた反応から「デモ」を
C どう改善するか
を考えます。
前述した流れを図示したものが下の図です。細かいですね。
要は、
- 青が「A デモ」
- 緑が「B 反応」
- オレンジが「C どう改善するか」
ということです。
ちなみに、このような開発スタイルをリーン式開発では「顧客開発」と呼んでいます。もう少しわかりやすく言えば「顧客駆動開発」というところでしょうか。
なお、ソリューション・インタビューをする前に以下の事柄をあるていどハッキリさせておく必要があります。
顧客は誰か
実際より広げて考えてしまう(開発者の希望的な観測)など、意外に間違えます。例えば、以前に私がデモを作った「世界史学習アプリ」では、以下のような食い違いが明らかになりました。
- 開発者の想像する顧客
世界史を勉強する学生 - 実際の顧客
マンガが好きな学生
…ぜんぜん違いますよね。
顧客の抱えている課題は何か
これも意外にバリエーションがあります。例えば歴史学習なら、以下のような課題があるとわかりました。
- 「ドラマが必要」
- 「簡潔さが必要」
- 「構造化が必要」
ちなみに私自身は、1つ目の課題しか想定していませんでした。
この辺の詳しい話は、以下の記事にまとめています。
ソリューション・インタビューを改善する
先週、ソリューション・インタビューをする機会が2回ありました。その結果の一部は既に記事にしていますが、ここでは今までのソリューション・インタビューを振り返って、何がポイントなのかを考えたいと思います。
ソリューション
「物理の学習を助けるアプリ」。
以下のような画面を用意しました。
【改善ポイント1】顧客の課題を分割する
改善前は、以下のような指摘を受けました:
授業案のように、まず対象となる生徒像を想定すべき
- 生徒のレベルに合わせたアプリを提供すべき
- 学校によっては、グラフの見方がそもそもわからない生徒が少なからずいる。そういう生徒たちにいきなりvtグラフを見せてもわからない。
- 生徒によっては微妙なギザギザが気になってしまう。そういう生徒には、可能な限り綺麗に見えるものを見せた方が良い。
vtグラフには学習項目がいくつもあり、丁寧にフォローすべき
- 右上がりの時はどんな運動か
- 水平の時はどんな運動か
- v=0のときはどんな運動か
- グラフがx軸と交差する時はどんな運動か
- 自由落下はどういうグラフか
- 投げ上げはどういうグラフか
つまり、
ターゲットが絞れていなくて曖昧である
という指摘です。そこで2回目のソリューション・インタビューでは、以下のように課題を明確にしました:
改善前の課題
vtグラフがわからない
改善後の課題
課題1
物体の運動が、
- 止まっているとき、
- 動き始めたとき、
- 加速が止まって一定の速さで進んでいるとき、
- ブレーキをかけ始めたとき、
- 停車したとき、
vtグラフがどのようになるか、わからない
課題2
vtグラフから、どんな運動か読み取ることができない
課題3
等速でない運動でvtグラフの面積=移動距離となることが、わからない
2回目のプレゼンで、このように顧客の課題を分割すると、1回目のときのような意見は出ず、スムーズに提案することができました。
【改善ポイント2】提案物を分割する
改善前は、以下のような指摘を受けました:
- vtグラフだけなら良いと思うが、力の計算までやるのは生徒が混乱するのではないか
- 授業と同じで、一度に複数のことを教えない方が良いのではないか(スモールステップ)
- 1つのアプリは1つの学習に絞るべき
そこで、2回目のプレゼンでは発表を2つに分けました。
改善前の提案
改善後の提案
これも2回目は1回目のときのような意見は出ず、スムーズに提案することができました。
【改善ポイント3】既存の事業にどう組み込むか、細かく具体的に示す
これは2回目のプレゼンで明らかになったポイントです。指摘としては以下のようなものです:
- 授業のどのタイミングで映像を見せればいいか、わからない
- 生徒にこのアプリを持たせて外に出て、学習したことをレポートにまとめて提出させるのが良いと思うが、用意する時間がない
要するに、自分で考えて準備するのではなく、そのまま使えるという状態になっていることが望ましい、ということです。
これについては、例えば以下のような提案が可能かと思います。
- このアプリを使って「…なときどうなったか?」というレポートを書かせる。レポート用紙の設問まで提案する。
- 一斉授業では、「この単元のこの概念の説明のこのタイミングに見せて説明する」と提案する
次回のプレゼンテーションのときにやりたいと思います。
まとめ
ソリューション・インタビューのポイントを3つ示しました:
- 【ポイント1】顧客の課題を分割する
- 【ポイント2】提案物を分割する
- 【ポイント3】既存の事業にどう組み込むか、細かく具体的に示す
何かの参考になれば幸いです。
なお、毎週水曜日に @shida さんの主催する「リーン・スタートアップ読書会」(オンライン、DevLOVE リンスタカフェから派生)が行われています。この勉強会は毎週水曜日の夜9時半から1時間ほど、Hangoutを使って行われています。