MOOC誕生
MOOCが米国で生まれた背景は、以下の通り:
- 教育予算の逼迫。
- 教育費の高騰、中流家庭の生徒が大学に進学できないという問題。
- 従来の教育は大量の生徒をさばけない。
というわけで、行政がMOOCに飛びついた。また、技術的背景は:
- クラウド技術の確立※1
- ネットワークの品質が上がった。
- ソーシャルネットが浸透してきた。
※1 従来のeラーニングは小規模だったが、クラウド技術が大量の受講(スケールアウト)を可能にした。MOOCプラットフォームとしては、オープンソースのedXがワールドワイドなデファクトスタンダードになろうとしている。edXはアマゾンウェブサービスというクラウドで動いている。
MOOCに対する失望
2年前に始まったMOOCに対する失望が広がっている。
- 単位や学位につながらない不満。
- 低い修了率。edXの修了率は5%(だが、大量な学習データ・学習行動が蓄積されており、新しい知見が得られそうである。とても貴重なビッグデータ)。
- 教育課程に向くのはオンライン学習プログラムであり、MOOCはむしろ特定技術の習得をめざす社会人教育に向く。MOOCに対抗するオンライン教育プログラムが、すでにアメリカの大学では始まっている。
日本の某国立大学の苦闘
「米国では、GoogleやFacebookがコンピューティング資源を買い上げて安く教育に提供している。 日本の企業はこういうことをやらないので大学がやらなければならない。お金が足りない。大学同士の協力関係が必要である。
MOOCを反転授業やゼミに使おうとしている。大量受講者(Massive)への対応は、やる気のある教員のみであるのが現状である。万単位の生徒に対応できない。有志スタッフはかなりしんどそう。Openにする必要があるのかわからない。OCW(主に講義ビデオ)でいいんじゃないのかと思ってしまう。
ほとんどの教員が授業の「コンテンツデザイン」に挫折するので、組織的支援が必要だと感じている。MOOCの教材は、ビデオだけ作ったら良い、というものではない。小テストもやりたいが、現状のedXにはほとんどツールがないので、自前でソフトウェア開発している。さらに、教育工学やデザイナーの支援も必要だと感じている。
正直なところ、MOOCを本当に続けていくのかと問い直したい。」
MOOCは行き詰まっているようです。ワールドワイドに授業をおこなうのは無謀なのでしょうか。万単位の受講生からの質問に答えるのは地獄でしょう。
また、教育に大量の寄付がされる米国と、少ない予算だけでやっている日本とでは、かなり環境が違うようです。
日本で教員が単独でMOOCの講座を一つ回すのは、かなり無謀なことのようです。ちゃんと予算を付けてもらい、アドバイザー、デザイナー、ティーチングアシスタントらとチームを組むことが必要なのでしょう。
まだ2,3年は、国内でMOOCが立ち上がるのか、注視しておく必要がありそうです。