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フィール・フィジックス代表の植田達郎です。このニュースレターは弊社の活動にご協力いただいている皆様にお送りしています。今回は、横浜物理サークル3月例会で発表した内容です(サークル通信用の文章と同じです)。
「AIアプリを使った実験準備」というワークショップを行いました。この発表では、教員の多忙化、特に理科実験の準備にかかる負担を軽減することを目的として、試作したAIアプリの可能性を体験し、参加者からのフィードバックを得ることを目指しました。
発表内容
発表では、実験準備を支援する以下の3つの試作AIアプリを紹介する予定でした。しかし時間の制限から、1つめのアプリに絞って体験を行いました:
1. 実施実験ていあんくん:
実験室の備品リスト、小単元、準備にかけられる時間(5分〜2日)、教員の実験熟練度(低中高)を入力することで、実施に適している実験を提案します。これにより、授業者の能力・状況に応じた実験の準備を、迅速に開始できるようになります。
2. 安全対策ていあんくん:
実験内容を入力することで、予備実験のための安全対策リストを提案します。これにより、授業者の予備実験に対する心理的負担を軽くします。
3. 安全指導ていあんくん:
実験内容を入力することで、生徒への安全指導のためのチェックリストを提案します。これにより、授業者の実験授業に対する心理的負担を軽くします。
参加者は4人班に分かれ、これらのアプリの操作を体験し、班ごとに課題について議論しました。
参加者からのフィードバック
ワークショップ後にはアンケートが実施され、多くの貴重な意見や要望が寄せられました。主なフィードバックは以下の通りです。
良かった点
- 安全対策に関するアプリは、若手教員にとって特に有益である。
改善要望
ユーザーインターフェース:
対話機能があると、より良い実験提案につながる。通常の検索では見つけにくい実験情報を探すことができると良い。備品リストをチェックボックスで選択できるようにしてほしい。AIが提案する実験の根拠となる情報源(参考文献など)を明示されていると良い。
機能:
実験プリント、ワークシート、説明用スライド、実験のイメージ図、教師用資料(準備手順、準備の所要時間、授業時の指導手順、所要時間、注意事項など)を作成してほしい。図や動画などの視覚的に分かりやすい情報を提供してほしい。
AIの精度:
実験テーマに合致しない提案がある。実験に関するより専門的な知識に基づいた提案がほしい。
連携:
普及している生成AIサービス(ChatGPTなど)と連携できると良い。
課題点・懸念点
- AIアプリの提案の信頼性や、事故発生時の責任の所在に関する懸念。
- 現状は、ChatGPTなどの既存サービスに対する優位性が見出しにくい。
- アプリの操作に不慣れな教員は、選択式の操作であっても活用することが難しい。
活用提案
- 探究活動の時間に、実験室の備品リストを元に生徒が実験のアイデア出しや準備に活用できるのではないか(教員が個別に対応することは時間的に難しいため)。
- ベテラン教員にとっては、新たな実験のアイデアを得るための支援ツールとしての活用が考えられる。
議論されたポイント
- AIアプリは、実験経験の少ない教員を主な対象とすべきか、それとも全ての教員を対象とすべきか。
- AIが一般的な知識だけでなく、理科実験に特化したデータベース(事故記録を含む)にアクセスできるようにする必要があるのではないか。
- アプリの精度は、教員がAIに知識を教えることで向上するのではないか。
おわりに
みなさまからのフィードバックをバネにして、実験授業の負担をAIによって軽減する方法をご提案していきたいと思います。進捗にご興味のある方は、植田(tatsuro.ueda@feel-physics.jp)までご連絡ください。貴重なご意見やご提案を賜り、誠にありがとうございました。
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