Feel Physics | in Mixed Reality - Education | Blog

Physics Education with Mixed Reality (HoloLens)

OECD報告書を読みました:雇用とAIとペスタロッチの教育観

Photo by Adam Winger on Unsplash

本日の読売新聞の1面では、生成AIが大学受験の自己PRで使われているという記事が掲載されていました。みなさんにとっては今更だと思いますが、それにしても社会はAIによってどのように変わっていくのでしょうか。雇用はどのように変化するのでしょうか。それは間接的に教育を変えるはずです。こんなことをいつも考えている、フィール・フィジックス代表の植田達郎です。珍しく真面目です。

このニュースレターは弊社の活動にご協力いただいている皆様にお送りしています。今回は、先ほどの問いに対する答えの一端が載っていたOECDの報告書のご紹介です。


OECDの報告書とは:

世界の先進国が協力するための国際機関OECD(経済協力開発機構)が出す、経済や社会のさまざまな問題に関する調査結果や分析、提言をまとめたものです。例えば、教育、環境、経済成長など、私たちの生活に関わる多くの分野について、世界各国のデータを集めて比較し、より良い社会にするためのアイデアが書かれており、各国の政策立案に影響力を持ちます。

今回の報告書について:

タイトルは「雇用創出と地域経済発展 2024:生成AIの地理」。2024年11月に公開された200ページもある報告書ですが、ここではいくつかの文を抜粋し、グラフを1つご紹介するだけに留めたいと思います。もしご要望があれば追加の情報提供したいと思います。

まず前置きとして次のように記されています:

  • 生成型AIの労働市場への影響を完全に判断するのは時期尚早かもしれません。
  • AI技術の採用率はまだ低いため、この技術の長期的で広範囲な経済的影響は不確実なままです。

その上で、以下のように記されています:

  • 現在、生成AIに露出(注:特定の仕事を遂行するために必要な人間の能力とAIの能力とが重複している)されている労働者は4分の1ですが、この割合は成長が予想されます(最大70%)。
  • 以前は教育レベルの低い労働者の方が自動化リスクが高かったですが、現在はより高いレベルの教育を受けた労働者が生成型AIに大幅により多く露出されています。

具体的には以下のような図が示されています:

これは22個の職業カテゴリーがAIからどういう影響を受けるかを表しています。各バーは次の3色に塗り分けられています:

  1. 紫:影響は少ない(農林漁業、建設業、宿泊・飲食など)
  2. 薄い紫:AI補完性が低い(プログラマー、法務、金融など)
  3. 濃い紫:AI補完性が高い(技師、管理職、教師など)

「補完性が高い」というのは、イメージとして「特定の職業は他の職業よりもAIの無監督使用に適さない」ということです。個人的でだいぶ乱暴なイメージですが、これはペスタロッチの教育観であるHead-Hand-Heartと重なるように思います:

  1. 影響は少ない:Handを使う職業(農林漁業、建設業、宿泊・飲食など)
  2. AI補完性が低い:Headを使う職業(プログラマー、法務、金融など)
  3. AI補完性が高い:複合する職業(技師、管理職、教師など)

報告書に戻ると、最後のあたりで以下のようなことが示されています:

  • AI研究開発と採用は場所間で不均等であり、既存の社会的格差を深化させる可能性があります。
  • AI開発と採用が少数の支配的プレーヤーに集中しているため、市場競争に関する懸念があります。

うーむ、雲行きが怪しいですね(梅雨ですし)・・・傘を用意する必要がありそうです。


本件に関して質問等ありましたら、このメールに返信していただくか、お電話でも結構です。みなさんの生の反応が私たちの学びになっておりますので、どうぞお気軽にお寄せください。引き続き、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします!

参考資料