学芸会で「鶴の恩返し」をやるとき、いちばん効くのは照明だと思います。
つるが「決してのぞかないでください」と言う。その言葉と同時に、舞台全体がすっと暗くなる。機織りをするつるにだけ、丸くて強いスポットライト。少し遅れて、のぞきに来た若者にだけ、弱い光。
このとき、お客さんは迷いません。どこを見ればいいか、光が教えてくれるからです。
もし舞台をずっと明るいままにしていたら、どうなるか。全部が見えます。全部が見えるということは、どこを見ればいいか分からないということです。
暗くするのは、隠すためではない
暗転は、何かを隠すためにやっているのではありません。見てほしいものを1つに絞るためにやっています。引き算です。
しかもスポットライトは、止まりません。つるから若者へ、次の場面へ、順番に移っていく。光が動くから、説明のセリフを足さなくても筋が伝わる。
これは、アプリの画面でも同じだと思いました。
実験手帳に「ツアー」を入れました
実験手帳は、小学校の理科専科の先生のための授業計画アプリです。行事で予定がずれても、玉突き修正がワンタップで終わるように作っています。
ただ、初めて開いた人にとっては、ただの見慣れない画面です。ここに何を書けばいいのか、どこから始めればいいのか、分からない。
これまで私は、説明を足すことで解決しようとしていました。ラベルを増やす。注意書きを添える。でも、足せば足すほど、画面は明るくなっていく。全部が見えて、どこを見ればいいか分からなくなる。
そこで、暗くすることにしました。
初めて開いたとき、画面がふっと暗くなって、いま見てほしい1か所だけが明るく浮かびます。そこだけ読めばいい。読んだら「次へ」を押す。すると光が次の場所へ移ります。
順番に、連れて行ってくれる。
ツアーは3つあります
いまのところ、3か所に置いています。
1つ目は、年間計画のタブを初めて開いたとき。 2ステップで、まずどこを見ればいいかだけを示します。
2つ目は、最初の1学級を作り終えた直後。 ここで「実験予報」——このままの進み方で学期内に終わるかどうかを、天気マークで知らせる機能——の読み方を案内します。作り終えた瞬間がいちばん知りたいタイミングなので、そこに置きました。最後のステップには、予定づくりへ戻るボタンを付けています。案内して終わり、ではなく、次の一手へつなげたかったからです。
3つ目は、担当する学級が複数になったとき。 予報がどの学級を代表して出ているのか、🔔のマークを押すと何が起きるのか。1学級のときには要らなかった読み方が、ここで初めて必要になります。
いずれも一度見たら、次からは出てきません。毎回スポットライトが当たったら、うっとうしいだけですから。
画面を暗くして、指定した要素だけ明るく切り抜く。やっていることは、まさに舞台の照明と同じです。よくできています。
説明を足すより、他を引く
作っていて気づいたのは、私がずっと「足す」ことばかり考えていたということでした。
分かりにくいなら説明を足す。迷うなら注意書きを足す。それは親切のつもりでしたが、明るくしていただけだったのかもしれません。
暗くしていいんだ、と分かってから、少し楽になりました。
いま「実験手帳」を一緒に試してくださる先生を探しています。2学期から使い始めても、1学期の分は自動でたたまれます。そして初めての画面で迷わないところまでは、作りました。
気になった方は、こちらからのぞいてみてください。

