「物理教育の未来を創造する」フィール・フィジックスの植田達郎です。今日はある先生に小論文指導について教えてもらいました。
「優・良・可」の山は、一度では分けられない

小論文の採点というと、赤ペンを片手に、上から順に点数を付けていく——そんな一直線の作業を思い浮かべるかもしれません。
でも、公平に採点しようとすると、まったくちがう景色になります。
あるベテランの先生の採点は、こんな順番で進みます。まず10枚くらいまとめて読んで、いったん採点する。次に、その採点済みの答案を横に並べて見比べる。「この子とこの子は、同じ『良』でいいのだろうか」。ひとつずつ点数を付けているだけでは、答案どうしの釣り合いが取れないからです。
そうやって、答案を「優・良・可」の3つの山に分けていきます。分け終わったら、また読む。今度は山の中をもっと細かく分け直す。同じ『良』でも、上のほうと下のほう。並べては直し、直しては並べる。この地道な作業を、公平さを守るために、何度も繰り返します。
採点が遅いのではありません。ひとりの答案を、ほかの全員と釣り合わせようとするから、時間がかかるのです。これは、雑にやれば一瞬で終わる仕事を、あえて丁寧にやっているということです。
添えたいのは、点数ではなく「考え方」

この先生がすごいのは、採点の先です。
点数を付けて返すだけでは、生徒は「なぜこの点なのか」が分かりません。だから、ひと言、指導を添えたい。けれど、その添え方にこだわりがあります。
「ここをこう直しなさい」と、本人の文章に直接手を入れるのではないのです。そうすると、直された文は良くなっても、次に自分で書くときには活かせない。だからこの先生は、まったく別の例文を見せて、「こういう感じで書くといいよ」と伝えます。答えそのものではなく、書き方の考え方を渡す。
自分で気づいて、自分で書けるようになってほしい。そういう親心のこもった採点です。
丁寧な人ほど、仕事が集まってしまう
ただ、この丁寧さには、影があります。
指導を適当に済ませてしまう人が多いぶん、しわ寄せが、丁寧な先生のところへ集まります。聞けば、上位クラスの小論文は、ぜんぶこの先生が引き受けているそうです。できる人に仕事が集中する——学校にかぎらず、どこでも起きていることです。
でも、この採点のやり方を知ってしまうと、簡単に「もっと効率化を」とは言えません。並べ替えも、別の例文で示す指導も、公平さと生徒への愛情から生まれているからです。削っていいものではありません。
だから私が思うのは、ただひとつ。どうか、働きすぎに気をつけてください。その丁寧さは、生徒にちゃんと届いています。届いているからこそ、あなたが倒れないでほしい。
丁寧さはそのままに、体だけをラクにする。そういう道具をつくれないか——今、そんなことを考えています(チョットいっしょに作りました)。
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