もしアナタが親御さんだったら、子供がある日「動物を飼いたい!」といってきたら、どうしますか?「めんどくさそう」ですよね。でも私がまかせてみたところ、準備から世話まで、意外にしっかり子供たちはやるようです。
いちばん最初のきっかけは、大学時代にやっていた科学博物館アルバイトの経験です。その科学博物館には、ヒナの孵卵器がありました(この記事 でも取り上げています)。懸命にもがきながら卵からヒナが出てくるようすは、純粋にというか単純にというか、感動的なんです。
そこで私は、この感動を子供たちにも味わせてやりたいと思ってました。
そんな折り、近くの小学校の理科の先任の先生が、サケの卵のひきとり手を探していることを、職場の先生に教えてもらいました。放流までの3ヶ月間、あずかって育ててくれる学校を探している、というのです。
渡りに船なのですが、私自身は忙しくて、とても世話をしている時間はありません。そこで、生きもの好きの生徒に相談を持ちかけました。
「お前、学校でサケを育ててみないか?」
「え、いいの?やるやる!」
彼は二つ返事で了承してくれました。その後はほとんど、その生徒がやってくれました。水槽を持ってきて、ポンプやろ過装置の設置をやってくれました。展示のための説明文もつくってくれました。エサも彼がやってくれています。私がやったのは、最初に卵をもらいに行くことぐらいでした。
なお、困ってしまったこともありました。もらってきた卵がぜんぜん孵(かえ)らないのです。困り果てていたときに、水の入れ替えのために一時的に別の場所に卵を移すことがありました(これも生徒がやってくれました)。たまたまその場所は、日のあたらない暗い場所でした。翌日、その生徒が駆け寄ってきました。
「先生、なんかいっぱい生まれてるよ!」
そう、問題は光だったのです。明るい場所ではぜんぜん孵らなかったのが、暗い場所に移すといっせいに生まれてきました。サケって、こんなにもナイーブな生き物なんだなと思いました。
今もサケの稚魚たちは元気よく水槽の中を泳ぎ回っています。あと1ヶ月で放流です。通りがかりの生徒たちが、サケのようすをのぞいていきます。あなたも生き物を飼うのがめんどうなら、ぜひ子供にまかせてみて下さい。
しかし残念なのは、結局のところ、生まれる瞬間を見せることはぜんぜんできなかったことでした・・・なんてこったい!