動画のナレーションは以下を御覧ください。
力と力の方向に動かした距離との積を、仕事(work)とよび、ωで表す。つまり
ω=fa
この仕事ということばを、この意味に使うのはあまりよいこととはいえない。
物体をある高さまで持ち上げることは、仕事にはちがいないが、日常では仕事の意味はこれだけではない。
日常会話では、仕事とはどんな形でも努力することを指す。
たとえば、椅子に静かに半時間すわって、この本では次に何を書こうかと考えることは、確かに仕事をしているといえるが、力を加えてある距離だけ動かしているわけではないので、物理学では仕事をしているとはいえない。
さらに、ある場所に立ったまま、重いものをささえていることは、たしかに大変な仕事であるが、その物体は動かないから、物理学的な仕事をしているとはいえない。その物体をもったまま歩いたとしても、その動き方は水平で、力の方向(垂直方向)には動いていないから、仕事をしているとはいえない。
不便なことは不便にちがいないが、力に力の方向に動いた距離をかけたものを、仕事と呼ぶことは、ずっと昔からの慣行であり、いまさら変えるわけにはいかないことである。
これから具体的に、仕事をリアルタイム・グラフで見てみよう。摩擦のある机の上の物体を押してみよう。
動かした距離が大きくなるほど、かかった仕事も大きくなることがわかる。ここでは、1kgの物体を8メートル動かすのに20ジュールほどかかった。倍の16メートル動かすのには40ジュールかかるだろう。なお、仕事の単位は発見した人名にちなんでジュールと呼ばれる。
次に、物体の重さを変えてみよう。物体が重くなるほど、物体を動かすのに必要な力の大きさは大きくなるというのは、日常的な感覚でわかるだろう。物理学的には、物体の重さがN倍になれば、力の大きさもN倍になる。従って、仕事もN倍になるはずである。
思い出してみよう。1kgのときは20ジュールだった。
2kgのときはどうなるだろうか。
物体を押していくにしたがって、かけた仕事が増えていく。今回は40ジュールかかった。ちょうど2倍である。
4kgのときはどうなるだろうか。物体もだいぶ大きくなった。
物体を押していくにしたがって、かけた仕事が増えていき、最終的に80ジュールかかった。またもや、ちょうど2倍である。
したがって、物体の重さがN倍になると、その物体を動かすのにかかる仕事もN倍になることがわかる。
まとめよう。物理学における仕事とは、力と、「力の方向に動かした距離」との積である。力がN倍になれば仕事もN倍になり、動かした距離がN倍になれば仕事もN倍になる。
ここから上級者向けの説明です。
質量mが2倍になると、重力mgが2倍になります。すると床に対する垂直抗力F1も2倍になります。すると摩擦力F2は
F2 = kF1(k:動摩擦係数)
より2倍になり、動かすための力F2の大きさが2倍になります。したがって、
W = Fx
より、仕事Wが2倍になるわけです。