Feel Physics | in Mixed Reality - Education | Blog

Physics Education with Mixed Reality (HoloLens)

教育者が脳学者の本を読んで思ったこと

昨日は養老孟司の中学生向けの本『バカな大人にならないための本』を読んだ。冒頭でいきなり「バカとか賢いとか言うのは意味がない」という話があり、おいおい・・・という感じ。

内容は、一言でいうと現代社会に対する批判。論拠として脳の基本的構造を挙げ、現代社会では脳が育たないと説く。

脳の基本的構造についての説明は大変興味深かった。

まず、脳(正確には大脳皮質)の広さは新聞紙ほど。それが頭蓋骨の中に押し込まれているため、しわだらけになる。

脳内の情報の流れは、脳の側面や後ろ側から始まって、頂上部を通って額に至るあいだに処理され、そこから運動器官に指示が発せられる。すると、その運動の結果として感覚器官から刺激情報が入ってきて、再び頂上部を通って額に至る処理過程に入る。

つまり、人をその人の右側から見ると、情報は時計回りにグルグル回っている、循環しているというわけだ。

著者は、この循環が脳の発達にとって重要であると説く。そして、特に循環の中の運動の部分が現代社会では体験する機会が少ないことが問題だと主張する。

また、「ミラーニューロン」の話もおもしろかった。同じ趣味を持つ人とは話が弾むものだが、これは自分と同じことを他人がしているのを見ると脳が活性化されるそうだ。鏡に映った自分を見るようなので「ミラーニューロン」と言うそうな。おそらくこの仕組みは、人間集団が社会を構成する基本要素なのだろう。

個人的に気になった点は2つ。

まず、言葉づかいが難しすぎて、はっきり言って中学生向けではないこと。ほとんどの中学生(だけではないが)は漢字が3つ並ぶとわからない。「関連性」とかだ。

あと、批判が多い割に現実的な対案があまり示されていない、というか、「田舎で農業をやってみなさい」としか書いていないこと。たぶん著者自身が子供の頃に虫取りに夢中だったため、このような主張になっていると思うのだが、単調に感じた。

さてここからは個人的な話であるが、知能+感情=性格ではないかと思い始めている。知能は視覚情報処理、聴覚情報処理、注意制御、思考などを合わせたもので、感情は喜怒哀楽だ。

知能が正常にはたらき、活性化し、発達しているとき、人は喜びを感じる。例えば他の人と行動や感じたことなどを共有すると、ミラーニューロンが活性化し、人は嬉しくなる。この要素を多く持っている人はコミュニケーションに依存する度合いが強くなり、「つきあいの良い人」になるだろう。

しかし感覚もしくは思考が攻撃を感知し、怒りを起動させた場合、相手が屈服するか気分を変えない限り怒りは持続する。怒りを起動する思考が分岐せずに循環し続ける限り、怒りは持続し、紳士的な対処を考えることもできない。このような人は危険だ。ひどい場合には殺人を犯すだろう。実際、衝動殺人者の多くが思考過程(前頭要)が弱いことが実証されている。

このように、大脳という新聞紙は感情と結びついたとき初めて性格という立体となる・・・のかな?